根拠があるからやる?根拠がないからやらない?
- 佐々木 雄大
- Jul 30, 2015
- 3 min read
根拠があることを優先して行うべきなのでしょうか?根拠がないことは行ってはいけないのでしょうか?
ガイドラインなどを見ると、エビデンスレベルとともに推奨度グレードというのがあります。それぞれのグレードは次のようなものになります。
GradeA 行うように強く勧められる
GradeB 行うよう勧められる
GradeC1 行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない
GradeC2 科学的根拠がないので、勧められない
GradeD 行わないよう勧められる
以上のように段階付けされ、基本的には上位のGradeのものを優先して実施するように、特に臨床経験の浅いPTには勧められるとされます。
それにより、科学的根拠にもとづいて効果を期待できる、しかもリスクの少ない治療の実践を可能にできるかもしれません。基本的には私はこの考え方に大賛成です。
例えば、日本理学療法協会の背部痛のガイドラインによれば、変形性ひざ関節症に対するホットパックは
エビデンスレベル2:1 つ以上のランダム化比較試験による
推奨グレードC1:行うように勧められる科学的根拠がない
一方で、運動療法は
エビデンスレベル1:システマティック・レビュー/RCT のメタアナリシス
推奨グレードA:行うように勧められる強い根拠がある
これだけを見ると、変形性ひざ関節症では運動療法を重視して進行すべきと思われます。
こういった考えを全ての理学療法士が少なからずルーチンとして持っていることが専門職として求められるのかもしれません。。
しかしながらエビデンス至上主義ほど、ある意味危険なものはないです。
そもそも論で、医療の多様性に簡単にフィットできる研究なんてほとんどないです。しかもエビデンスは効率を重視しがちです。患者の人となりを無視するリスクだってあります。
変形性ひざ関節症の患者さんも、ホットパックすると長くあるく自信がつくとか、筋肉が痛くなくなるとかという印象を本人がもっていればそれはそれで、ものすごい価値がある治療でしょう、例えそれで運動療法や徒手療法をする時間があまりなくなったとしても。
また、優れた臨床家が出しているケーススタディを見るとエビデンスそのまま引用している人なんてまずいないですよね。患者の症状に合うかもしれないエビデンスを最高の形で調節しながら活かしている人がやっぱり優れた臨床家と感じます。
正直、今、運動器リハビリテーションに関していろんな意味で世知辛い時代だなと不安に思うことが多いです。
いちクリニックの理学療法士として働いている私にはどうも実感が薄い時がありますが、高齢化に伴い医療費は年々膨大になっています。
普通に考えたら、端からみて根拠のはっきりしないことをしている専門職や結果を示してこない領域から診療点数が減るのが残念ながら妥当だと思います。
そういった意味でも、ある意味かなり多様性が許されてしまいがちな理学療法は医療全体にもおいても格好の的になってしまいかねないかなと、理学療法士ながら思います。
だからこそ、理学療法士一人一人が、できる限り(科学的な)根拠を、いちツールとして活かした臨床実践をしていくこと、そしてそれが障害に対して根拠があるのか、さらには患者にとってその時に価値があるのかを考えながら行動していくことが求められるのだとかんじます。
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