Evidence Based Medicine
はじめに
理学療法においてもEBM(Evidence Based Medicine)を重んじる風潮はごく当たり前のものになってきています。しかし日本の理学療法におけるEBMは、世界的なスタンダードと比較すると、その歴史が非常に浅く、まだまだ適切な理解が成されていないのが現状です。とはいえ日本理学療法士協会がEBMに関するホームページ(1)を設けるなど、医療のスタンダードとしてのEBMが我々理学療法士の世界でも浸透してきていることが分かります。
現代のEBMはその進歩が幾分悪い方向へと向かっているとの警告もあります。 Greenhalghは2014年に’’Evidence based medicine: a movement in crisis?’’というタイトルのエッセイを出しています(2)。乃ち、EBMが危機的な状況にあるのでは?というものです。彼は現代のEBMにおける問題として以下のようなものを挙げています。
1.エビデンスの質が、不適切化している。
2.エビデンスの数、ガイドラインの数が多過ぎる。
3.統計的有意差が、臨床的には大したものではない。
4.患者中心でなく、管理のためのルールになってしまっている。
5.併存疾患がある患者には無力である。
上記の例として、エビデンスが本来求められるべき治療効果の違いという形での情報ではなく、ある企業の製品を応援するような形で作成されてしまう(上記問題1)、本来の個々の患者のケ アを助けるツールとして利用されるべきエビデンスが、ケアの手順そのものを規定する形で利用されてしまっているなどが(上記問題4)挙げられます。他のコンテンツでも理学療法の標準化のために必要とされるClassificationが紹介されていますが、このClassificationについてのエビデンスも使いようによっては、上記問題4にあるようなリール主権的な考えを導きかねない危険性を含んでいます。よって私たち、理学療法士はEBMの中でもまだまだ若い専門職種として、EBMの哲学、その使い方、その欠点といった内容について理解し、より洗練された形でEBMを実践していくことが求められます。
(1)EBPTチュートリアル|公益社団法人 日本理学療法士協会 http://www.japanpt.or.jp/ebpt/ index.html
(2)Trisha Greenhalgh Evidence based medicine :a movement in crisis? BMJ 2014