Planter Heel Pain
- 川上 祐貴
- Jun 18, 2015
- 3 min read
American College of Foot and Ankle Surgeons(ACFAS)の臨床実践ガイドライン(2010年改訂版)によるとHeel Pain(踵部痛)の原因として関節原性(arthritic),神経原性(neurologic),外傷性(traumatic),あるいはその他の全身性疾患(other systemic conditions)が存在するとしているが,圧倒的にメカニカルストレスによるものが多いとしています.
そのガイドラインに記載されているPlanter Heel Painの特徴的な病歴としては踵に限局した痛み,歩き始め/じっとしているところから立ち上がるときの痛み,朝の痛み,裸足やサンダルのような靴を履いているときの痛みが挙げられます.
特徴的な所見は踵部や足底筋膜の圧痛,肥満/BMIの高さ,回内足,踵部脂肪体infracalcaneal fat padの局所的な腫脹や萎縮があるとされています.
つい最近のことですが,脂肪体の炎症所見がみられる方を担当した経験がありました.踵部脂肪体(heel fat pad;以下 HFP)は足部の保護という役割を担い,床面から受ける衝撃緩衝にも役立っています.その衝撃緩衝能力は構造や形状,厚みによって決定づけられるとされ(Miller-Young et al2002),議論の余地はありますがHFPの厚み(thcikness)が衝撃吸収に関わる最も重要な構造学的要素として考えられています(Gooding et al1986, Cavanagh et al1997).
そしてそのHFPは繰り返しのストレスや強大なストレスによって損傷を受ける他,特定の病態に萎縮(atrophy)がみられることが報告されています(Morag et al1997).例えば糖尿病,関節リウマチ症,踵骨骨折などがあげられます.またその厚みは性別,年齢,競技活動レベルによっても左右されるそうです(Uzel et al2006).
今回のケースでも足底腱膜の付着部や中央部などには圧痛はなく,Neurodynamics testも異常なし,HFPに限局した圧痛と腫脹および熱感,さらに左右で比較して患側HFPの脂肪体の平坦化/萎縮や触診したときにブニュッっとした感触で踵骨に対して過剰にモビリティを有していることが確認されました.
論文を検索したもののあまり確立された治療方法がみつけられず,ネット上の情報ではありますが,多くが安静,そして免荷(unloading)というものでした.免荷にはおおまかに二つあり,テーピングとパッドの作成/使用があります.わたしも免荷テーピングを適応しました.テーピングを使用した状態では痛みが消失し,自由に歩行することが可能でした(*テーピングはホースシュー状に踵骨にアンカーテープを貼付し,外側から内側に向けてHFPを寄せてもちあげました).このテーピング方法で通常であれば1-2週ほど適応し続ければ炎症は退くと思いますよと伝え,1週後来院していただいたところ,かなり腫脹がとれており,日中に関しては痛みがなく,多少朝方に痛みがある程度でした.
しかし,今回のケースでは距腿関節にひどく変形性関節症を有しており,可動域も制限が強く,立位では踵骨の外反がハッキリと見て取れるほどでした.わたしは免荷して炎症状態が落ち着いたところでこうしたアライメントや運動機能異常がのちのちのリスクになりかねないと考えていたところ...3-4週経過して来院されたときにやはり一時的に悪化して,腫脹が少し戻っていました.テーピングの貼り換え頻度や貼り方の再確認などを行ったのち,評価し直し,距骨下関節のモビライゼーションを適応した後には痛みは軽減するものの,どこまで対処しきれるか考えている最中です.
heel fat padの炎症について何か治療のご経験がある先生,情報や論文をお持ちの先生がいらっしゃったら是非教えていただきたいです.よろしくお願い致します.
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