Clinical Prediction Rule
- Yudai Sasaki
- Apr 8, 2015
- 3 min read
Clinical Prediction Rule(CPR)をご存知ですか?
CPRは診断・治療・予後の正確性を増加させるためのツールであり、理学療法におけるCPRはアメリカを中心に開発が進んでいます。
例えば、腰椎のManipulationについてのCPRは、
・腰痛の期間が16日以内
・股関節の内旋可動域が35度以上
・腰椎の低可動性
・膝への放散痛がない
・FABQのスコアが19点未満
の内、4つ以上が揃えば事後確率95%で症状が改善するとしてます。
( Cleland JA, et al. The Use of a Lumbar Spine Manipulation Technique by Physical Therapists in Patients Who Satisfy a Clinical Prediction Rule: A Case Series. J Orthop Sports Phys Ther. 2006; 36(4): 209–214.)
また膝蓋大腿関節痛に対するMcConnell tapeのCPRは
・膝内反角が5度以上
・Patellar tilt signが陽性
の所見があれば事後確率83%で症状が改善するとされています。
( Lesher JD, et al. Development of a clinical prediction rule for classifying patients with patellofemoral pain syndrome who respond to patellar taping. J Orthop Sports Phys Ther. 2006; 36(11): 854-66.)
いずれも本邦においては少し特殊な治療方法ではありますが、正直83%や95%というのは驚くべき数字です。
でも皆さんは本当にこうも簡単に治療の効果を予測できると思いますか?このルールの通りに治療すれば80~90%の効果が保証されると思いますか?これには少し疑問があると思います。
これは決してCPRを否定したいわけではありません。ここで要点としたいのはCRPの適切な使用方法と弱点を知っているべきということです。
先に書いたようにCPRとは診断・治療・予後の正確性を増加させるためのツールの一つです。意思決定のベースになるのは、あくまで個々の理学療法士のクリニカルリーズニングであり、臨床現場という複雑な環境においてはこれに勝るものはないでしょう。
しかしEBMの実践が求められる現代医療の枠組みや、日本のようなPTを指名できない環境下では、より確実性が高く且つできる限り失敗の少ない意思決定・治療が求められがちです。また各PTで決定事項や実施内容の部分的な標準化を図るためにもこのようなツールは役に立つことも多いでしょう。
例えば腰椎のManipulationもしくはMobilizationを使うにしても、
『この患者は伸展動作時の腰椎の右回旋変位があって、そちらの方向に運動を強めると症状が増加する。さらには他動運動検査でもL5の反対回旋方向の可動域が特に低下している。また仙腸関節は…(以下省略)よってL5の 左回旋方向のMobilization/Manipulationが良いだろう!』=臨床的エビデンス
『さらにCPRの4つの因子に合致しているから成功率は95%と高い報告に当てはまるだろう!』=科学的エビデンス
『よしManipulation/Mobilizationをしよう!!』=意思決定
といった感じが理想の使い方に近いのではないでしょうか。
しかしCPRには致命的な弱点があります。それは臨床に違和感なく適応できる理学療法のCPRは今のところ、一つもないということです。
CPRはその開発においてDerivation(因子の抽出),Validation(妥当性の検討),Impact Analysisという段階があり、理想的にはImpact Analysisまでされた初めて臨床適応がなされるべきとされています。しかし、理学療法におけるCPRではImpact analysisがなされているものは無いのです。Validationが成されたものでさえ、腰椎のManipulationや牽引などその種類はかなり限られたものになります。こういった研究上の手はず上の問題を知っておくこともまた適切に情報を扱う上で必要となると思われます。
以下、参考文献です。
参考文献
Beattie P and Nelson R (2006) Clinical prediction rules: What are they and what do they tell us? Australian Journal of Physiotherapy 52: 157–163
John D Childs and Joshua A Cleland(2006)Development and Application of Clinical Prediction Rules to Improve Decision Making in Physical Therapist Practice
PHYS THER. 86:122-131
Beneciuk JM, Bishop MD, George SZ.(2009)Clinical prediction rules for physical therapy interventions: a systematic review. Phys Ther. 89:114 –124.
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