腱板損傷の理学療法
- Hiroki Saito
- Apr 6, 2015
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長期的に見た場合の腱板断裂は予後が良好と言われていますが、具体的なマネージメント、とりわけ手術するか保存にするかということについては議論があります。
最近でた論文では、保存療法と手術療法で比較した場合、一年後の結果に有意差がないということも言われています。また、手術を選択した場合の改善はみせるものの、年齢、脂肪変性の状態などが影響して最断裂の率の問題点も指摘されています。 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24395315
しかし、例え最断裂が起こったとしても、そのうちの72%において痛み、筋力、可動域や日常生活において改善が見られます。つまり、断裂部をrepairしたとしてもそれによって痛みなどの症状が消えたかどうかは疑問が残るようです。 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2766755/
この理由の一つとしては、そもそも腱板自体には神経支配が少なく痛みがそこから発生しているとは考えずらく、それよりもむしろ、それを囲う滑液のほうが痛みの原因になりやすいとの見方があります。また基本的に外傷ではないかぎり、非特異性腰痛と似ており、痛み自体が認知機能の影響またはそれに伴う運動パターンの変化などに起因することが多いのではと思います。気持ちよくばっちり切れててピンピンしているおじいちゃんもいれば、ほんの少し損傷しているのに夜間痛がひどい主婦の人もよくいます。
ただ実際、ずっと五十肩と診断されてて、しっかりとした病院で腱板断裂と診断され、手術にいたりびっくりするほど改善するケースも多いですし、「ほんとにしっかりと、腱板断裂を診断してもらってよかった」ということもよくあります。つまり実際どのファクターが症状を起こしているかが明確ではないので、マネージメントに議論が残ります。
まとめると現在のコンセンサスとしては、腱板断裂患者に対しては、基本的に理学療法による機能改善、注射による抗炎症などをトライしそれが失敗した時に手術適応(縫う)を考えるというのが推奨される流れです。あとは状況に応じて医師とPTとの間で議論を交わし、一人一人個別に決定するのが理想ですね。 http://www.moveforwardpt.com/Radio/Detail.aspx…
これらを踏まえ、理学療法士からの立場から腱板断裂を保存で治すための肩の痛みについての情報です。肩に痛みがある人とない人で筋活動を比較した結果、痛みがある人は前鋸筋の活動が下がり、僧帽筋上部が低くなります。また筋活動のdelayも見られます。これを修正するテープまたは肩甲骨のモーターコントロールトレーイングなどで改善をみせるという結果がでています。しかし、エビデンスレベルが低いようです。理由としては臨床的にこのような運動パターンの変化を捉えるツールも不足していること、また痛みが運動パターンの変化を起こすのかそれとも逆なのかが不明なことがあると思います。 http://ptcoop.org/fellow-lecture-scapular-movement-pattern…/
患者さんの主観的な情報(とくにこの場合過去に理学療法などを行ったか、腱板と痛みに対する考え方は重要)と妥当性、信頼性の高い客観的評価ツールなどを駆使し、リーズニングを行い、最終的な治療方針を決めるのがやはり重要です。
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