step4:患者への適応
科学的情報を患者に適応すること、そしてその適応しやすさの程度は外的妥当性という言葉で表現されます。情報の適応は単に論文の情報を患者にあてがうだけではなく、臨床家個人の経験や施設の状況など多面的に考慮し、最も適切な形で臨床適応を行うことが求められます。
すなわちここで、改めてこのセクションの冒頭で説明したエビデンスだけでは説明できないというところに立ち返ってくるのです。
現代の医療は、患者の人的尊重や経済的な問題などから生物心理社会的な医学モデルを重視するようになっています。目の前の患者の病理学的な、または機能的な問題を解決するのみではなく、個々の患者の心理状態や環境の違いも考慮した介入の選択が求められます。情報が入り乱れる社会であるからこそ、多くの情報を持っていること以上に、その情報をその個人に融合して扱うテーラーメイド医療の実践が望まれます。
とはいえ、EBMのステップを経験的な部分に大きく頼るというのは幾分学習を阻害する因子になるでしょう。木村は患者への情報適応について以下のような基準を挙げています。
1.エビデンスの臨床像は自分の患者に近いか。
2.臨床適応が困難と思われるような禁忌条件・合併症等のリスクファクターはないか。
3.倫理的問題はないか。
4.自分の臨床能力として実施可能であるか。
5.自分の施設における理学療法機器を用いて実施可能であるか。
6.カンファレンス等における介入計画の提案に対してリハチームの同意が得られたか。
7.エビデンスに基づいた理学療法士としての臨床判断の説明に対して患者の同意が得られたか。
最低限以上の項目について考慮することが実際の介入で行うべきかどうか、さらには患者にフィットするようにどのように自分なりの修正を行うべきかを考える材料になるでしょう。

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