Functional Behavior
患者の痛みの原因は何か?と考えるとき、理学療法士はその患者の呈する機能異常を捕らえそれと痛みとの関係を考えます。関節可動域制限、筋緊張、筋のストレングス、運動様式の変化、姿勢の変化または痛みに対する行動の変化(腰が痛いからなるべく座らないようにするなど)は痛みを呈するすべての部位で観察されます。ただいくら機能異常がその場で確認されたとしても、それが直接痛みの原因になっているのかそれとも痛みが起きたために体がさらなる組織の損傷を防ぐための戦略なのかはわかりません。後者の場合を介入によって変化させた場合、それが悪化してしまうかもしくは短期的な効果で終わってしまうことになります。そのため、臨床的には患者がとっている運動パターンが適応的なもの(Adaptive and protective)かそれとも不適応なもの(Maladaptive)かをまず判断する必要があります。
Adaptive and protectiveカテゴリー
このカテゴリーは急性の状態(機械的な痛みもしくは炎症の痛み)を想定するとわかりやすいです。身体がこの状態になったときは、体がさらなる組織のダメージを防ぎ、組織の回復を促すための反応をします。これは捻挫、挫傷または骨折などメカニズムがクリアに判断できるに見られ基本的には、筋肉の防御性収縮などで身体を守るような反応をします。行動の方へ面を向けると、休息をとるまたは痛みの起こる活動をしないなどの対応をします。ここで重要なのは、この分類に該当する場合、セラピストが患者に正常な運動や姿勢に戻すための治療は痛みの悪化を招くことになります。組織の回復がうまくいけば、そこから正常な運動を獲得するための治療を展開します。例えば、足関節捻挫の場合は1〜6週間の間でしっかりと正常へと導きます。
Maladaptive and provocativeカテゴリー
上記のadaptive and protectiveな状態は、1)一般的な組織の修復の期間が過ぎたときまたは2)痛みがあるが、それに関する病態的な異常が見つからないときには可能性として低くなります。一つ目の例としては、急性の捻挫症例で一般的な組織の回復が過ぎてても引きずり足や防御性収縮がある場合、痛みに対する恐怖や過剰な防御が起因していることがあります。また二つ目の例としれは、寝違えのような急性の頸部痛の患者で病態異常が見つからない場合です。このとき例えば、痛みが仕事場などのストレスがある状況で悪化したり場合があります。これらの状況の場合、患者が停止てる運動パターンは組織を守るためにうまく働いてないことが多く、むしろ症状が悪化している原因になりえます。そのためこの状態をMaladaptive and provacative と呼びます。これらの患者に見られる多くの特徴として、”組織が痛みを引き起こしている”と信じていることが挙げられます。
上記二つの分類をしたあと、さらに以下の四つの分類をします。
1.Movement impairment
movement impairmentは痛みがある方向において自動運動または他動運動に制限がある状態です。急性期においては、通常adaptiveなものすなわち組織を守るために良い反応としてみることができます。しかし、亜急性期や慢性期においてはmaladaptiveとして改善しなくてはいけない対象になります。わかりやすい例としては、足関節捻挫です。急性期では例えば筋の防御性収縮などで足関節の底屈、内反を防ぐことで組織にさらなるダメージを止めます。反対にそれが慢性期になると、可動域制限や痛みや恐怖心から靭帯の回復が終わっているのにもかかわらず底屈、内反を制限してしまい、それが原因で痛みがでてしまいます。すなわち、これに分類される症例は、自動もしくは他動的に制限がとれれば症状は改善する方向に向かいます。
2.Control impairment
control impairmentは、姿勢や運動のコントロールに異常がある状態です。これは脊柱の痛みや末梢の関節におけるoveruse(例えば肩のインピンジメント)などに関連することが多いです。この場合は基本的には、自動運動や他動運動の制限がありません。肩のインピンジメントを例にとると、肩関節可動域自体はfull rangeですが、例えば三角筋などの活動が大きい、前鋸筋などの肩甲骨の上方回旋を司る筋肉がうまく働かないなどの運動様式に異常を認めます。すなわちこの分類の場合、運動パターンを正常に戻すことで、痛みが改善します。
3.Pain behavior
この分類は上記二つのどちらでも見られる状態です。顔をしかめる、息が荒くなる、うめくなど見た目でもわかりやすい表情であったり、逃避行動、痛みがある場合やない場合のon-offに一貫性がないなどが特徴です。セラピストが患者に治療効果を信頼させるように働きかけることなどによって痛みに対してpositiveな効果を得ることができます。
4.De-conditioning
De-conditioningとはライフスタイルの変化(椅子での生活)、運動に対する意識の低さ、不良姿勢や運動パターンなどが長期的に積み重なり、筋のなどの末梢の器官のコンディショニング不良が起こることによって痛みが生じることです。例としては、膝の痛みにによって足を接地するのを回避した結果、四頭筋の弱化を招き、それが膝関節の痛みをさらに悪化させるもしくは他の部位に痛みがでてしまうことです。
以上の四つの分類は、完全に患者によって分かれるわけではなく、いくつかの分類が重なることもしばしばあります。また四つの分類はお互いに関係性を持ちます。そのことを考慮し、目の前の患者がどの状態になっているかを明確にすることで、個々の症例にあったアプローチを提供できることになります。